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長屋の花見(かまぼこ風練馬大根、卵焼き風汐入り大根の沢庵?)


 世間から貧乏長屋だとバカにされているのは悔しいと大家が長屋の連中を花見に誘う。嫌がる連中だったが、聞けば酒と肴は用意してあるという。
それなら行こうかという気になった長屋の連中。しかし良く聞いてみると、お重の中は贋物だらけ、かまぼこに見立てたのは大根。黄色い卵焼きはというと沢庵、そして酒は薄めた番茶(お茶け)というわけだ。噺家によっては、干物が出てくる。これはなにかというと、「しらす干し」だという。
店子が店賃を払えないから、大家も貧乏。だけど貧乏神を追い払う景気づけにと用意してくれた。
長屋の連中は、意気消沈、しかし大家の言うことでは断れない。花見の場へまるで弔いか夜逃げの風情でぞろぞろとついて行く。沢庵で出来た卵焼き、食べると当然音がする。大家は、たまごやきを食べるのに音をだすなと怒る。またお茶けで酔わない連中に、酔えと強要する始末。落ちはお茶け(お酒)を飲んでる店子が大家に言う。
店子「今年の長屋はいいことがありますよ」
大家「なんでだ?」
店子「だって、酒柱がたってるもの」

元は上方落語の「貧乏花見」を元につくられたそうだ。こちらはよそ様のごちそうを横取りしたりと元気のいい噺だそうだ。江戸落語になった本作はひたすらやせ我慢をする展開になっている。
噺に登場する、かまぼこと卵焼き(大根と沢庵)は、練馬大根であるだろう。長屋の連中ががっかりする事から、日常的にというか、毎日の様に食べていたものと考えられる。
花見が今のような宴会の場になったのは徳川吉宗の時代だという、飛鳥山、向島、御殿山など桜の名所になっている公園は、吉宗が庶民のために計画的にさくらを植えた場所だという本作も上野が舞台のようだ。しかしこの噺、上方から伝わったのは、明治と聞くがそこはご勘弁ねがいたい。
倹約家で知られる吉宗は、滝野川ニンジン、小松菜などの逸話もある。

練馬大根汐入り大根(JA東京中央会)