~地産地消と食文化の醸成子ども達から得られるもの~  


ノースコーポレーション代表取締役 北康信社長に伺いました。


前回事務局へお訪ねしました、さいたまヨーロッパ野菜研究会ですが、今回は研究会の産みの親であるノースコーポレーション代表取締役北社長にお話を伺いました。

北さんは、さいたま市内でイタリアンレストラン4店舗とワインのオンラインショップを経営されておられます。レストランでは、新鮮なさいたま産ヨーロッパ野菜の他、埼玉県産ビーフなど地元の食材を使った料理を食べる事ができます。

 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて その2

学生起業~イタリアンレストラン開業

実業家の家に三人兄弟として産まれた北社長ですが、厳しい父親の意向で、家業を継ぐこと無く、自身で学生起業されます。

 

Qなぜ、食の世界を選ばれたのでしょうか?

人の生活に欠かせない衣食住のうち、「衣」に関して当時ユニクロが成功し産業構造が変わっていった難しい時期にあり、「住」は父が建設業であったので別の業界を選びたいと思いました、「食」であれば、必ず需要があり、まじめな事業をしていれば生き残っていけると考え、1995年に会社を設立し、1997年に土地勘のあるさいたま市ではじめの店を出すことになりました。

 

Q当初からイタリアンレストランですか?

まだ学生だった事もあり、ベテラン職人を抱えて店の経営をするのは大変だと思いました。そこでファストフードのチェーン化を狙って、当時アメリカで流行りはじめたロティサリーチキンの店をオープンしました。しかし色々工夫をしていったのですが、1年間赤字続きでした。やはり立地と客単価のバランスが取れていなかったのだと思います。そこから試行錯誤し、イタリアンレストランをオープンしました。

 

社会から必要とされる企業、人であること、

生き残っていくために、あえて遠回りをしていこう

Q 現在北さんは、さいたまヨーロッパ野菜研究会会長のほか、日本ソムリエ協会理事、埼玉武州和牛PR大使、シェフクラブSAITAMA 事務局長などを努められ、数々のPRイベントを精力的に実施されていますが、どこでそのノウハウを得られたのですか?

当初、お酒の勉強をするために日本バーテンダー協会に所属していました。その時に埼玉支部長の方と数々のイベントを行った事が、いま活きていると思います。現在それぞれのイベントも回を追う毎に活性化して、10月2日には、ソムリエ協会主催、イタリア料理協会協力で「SAItaly FESTA 2016」を開催し、両協会のトップ田崎真也、落合務両氏による、初のコラボイベントがさいたま市で実現しました。両氏の初共演がさいたま市であったなんて、うれしい事です。さいたま市はワイン、パスタ消費量、トップクラスです。これからも、イベントを通じて、食の街である事をもっとアピールしていきたいと思っています。

Q なぜそれほど、PRイベントに力を入れるのですか?

ある資料に企業の生存率は、10年で6%、30年では0.02%と書かれており、その数字を見たときに愕然としました。20代で起業し、これからまだ先の長い自分が、どう生き残っていけばいいか悩みました。その時、ふと目にしたポスターの「会社も社会の一員です」という言葉を見て、社会から必要とされる企業、必要とされる人であれば、ニーズがあるということ、生き残ることができるのではないかと考えました。「それならば、あえて遠回りをしよう、無駄と思える事もしていこう」と決意しました。きっとそれらが将来の糧になると考えました。「イタリア料理という中で、なにをしていくかという事より、イタリア料理を食べる人達が増えるためには何ができるか」。マーケットを拡大していけば、自分達はこれからも必要とされるだろう。そのために、コストがかかるPRイベントや、地域貢献も行っています

 


子どもたちの自慢、イタリアン給食!

Q 地域貢献といえば市内の小中学校にシェフを派遣し、イタリアン給食を作るという試みをされていますね?

さいたま市は現在、自分の学校で給食を作る自校給食を市立の小中学校全校(160校)で実施しています。そういった動きの中で、市内のレストランが協力して、市が指定した20校を対象にシェフが学校へ出向き、子ども達にイタリア料理の給食を食べてもらうという活動をしています。子ども達も大変喜んでくれて、通常残食率は10%前後といわれているところ、0%を達成しています。

 

Q さいたま市の取組みでもあるのですね。

しかし、さいたま市で予算が組んであるのは20校だけです。これだけでは、パフォーマンスだけになってしまいます。シェフ給食を通し、食文化を学び、子ども達が自分の達の住んでいるさいたま市に誇りを持ってもらえるようにするのが目的ですから、もっと数が必要です。指定校以外でも学校から希望があれば、私達は出張しています。目標としては各学校で3年に1回はシェフ給食が実施できるようにしたいです。

そのためにはレストランシェフと普段給食を作る管理栄養士との間でもっと情報交換をして行く必要があると思います。シェフが来なくとも管理栄養士の方だけで作れるようになれば、子ども達は、もっとイタリア給食の体験ができます。また1校につき、シェフを2~3名派遣する必要がありますので、レストラン側の負担も大きい、規模の小さい店では営業に支障がでますが、市の援助ではフォローできないのが現実です。ランチ営業を休んでも補填できるぐらい予算を増やすなど対策をとり、協力できるレストランの数を増やす必要がありますね。

子ども達が大人になった時に、友達へ「自分達の学校給食にイタリア料理があった」と自慢が出来るなんていいですよね。自慢できるものがあることが、郷土愛に繋がっていくと思います。それを我々は食を通して育てていこうと考えています。


自分で育て、食べる喜び

Q 子ども料理教室も開かれていますね

現在まで、1000人以上の子ども達が参加しています。先日はさいたま産のバジルをつかい、バジルソースのパスタを作る教室を行いました。会の最後に、今度は家でバジルを育て、料理して食べる事ができるようにバジルの苗を配りました。育てる喜び、食べる喜びを味わってもらう。これが食育であると思います。

 

Q レストランで働かれている方も地元の方と伺いましたが、やはり地元の雇用を増やして行こうというお考えですか?

さいたま市では雇用を作るというより、優秀な人材の都内流出をとめようと考えていました。

青山、六本木で働くというと、カッコはいいかも知れないけど、だからなんだ?という事です。産地の分かる、生産者の分かる安心な食材で、「自分の納得がいく料理を提供できる事がどれだけ価値がある事か」と、当社ではその価値観を大事にしています。

 

 

さいたまヨーロッパ野菜 地産地消成功の秘密は物流にあった

Q 研究会の野菜は配送ルートを通常と異なるものを使用されていますが?

色々な地域で、結局地産地消が軌道に乗らないのは、配送上の課題をクリアできなかったことが大きいのではないでしょうか?レストランが仕入れるヨーロッパ野菜は、1回にそれほど大量ではありません。数種類を少しずつという事になります。ですから通常の八百屋さんのルートを使っては、配送側が採算割れになってしまいます。そこで目をつけたものが、飲食店が毎日発注かけるもの、「酒」と「乾物」です。それらの配送車に乗せてもらえれば、配送側も負担が少なくなると考えました。お酒の配送は、幌トラックなので野菜は詰めない。そこで乾物を扱う関東食糧さんに交渉し協力を得ました。現在では1000軒のレストランに配送しています。

Q 大切なノウハウを教えてしまってもよいのですか?

目先の利益だけを考えれば、農家1軒とレストラン1社だけの交渉で良い訳です。しかし我々の目標である「イタリアンを食べる人達を増やしていこう」という事を考えれば、それでは駄目です。産地もレストランもそれぞれが、ボリュームを持たなければ意味が無い。

青森、石川など日本各地で、ヨーロッパ野菜を作るグループが出来ていますが、それらにも栽培や配送についてもアドバイスをしています。全国各地それぞれの地域で気候が異なりますから、特徴が出す事が出来ますし、当然収穫日もずれて来るわけです。そのことでいろいろな種類の野菜が一年を通して、確保できるわけです。

 

Q 現在、研究会の野菜は収穫してからどれくらいの時間で店に入るのでしょうか?

各レストランには集荷から約1日で、各レストランに届きます。当社では、研究会メンバーであり、シェフの一人が生産地の近くに住まいがありますので、朝直接引き取り、その日のメニューに出す事ができています。

 

 

さいたま産ヨーロッパ野菜 海外での評価は?

Q 現在は、生産者が価格を決めて出荷しているそうですが、このまま全国で生産量が増えてくると、値崩れを起こすような事はおこりませんか?

現在輸入に頼っている量までは、シェアがあると思っていますので、それを超えた時には、輸出をすればいいと思っています。たとえば香港などは、元々イギリス領であった事もあり、西洋野菜を食べる習慣がありますが、現地で販売されている野菜は、あまり鮮度の良いものではないようなので、市場としての可能性はあると思っています。

 

Q イタリアの文化交流事業イタリアの文化交流事業日伊国交150周年記念事業の中で、さいたまヨーロッパ野菜が評価を得たと聞きましたが

川越スタイルクラブとういう川越の文化を伝える活動をしているグループが、以前からニューヨーク、フランスなどでPRイベントを行っていましたが、今回イタリアで行う事を知り、相乗りという形で参加させて頂きました。現地に行ってみてわかったのですが、イタリアフィレツエで一番歴史があり、格式のある料理学校だったのです。本場の権威ある料理学校からお墨付きをもらった事で、研究会メンバーのモチベーションもさらに上がりました。

 

 

ブランド化と農家が経営者になるという事

Q ヨーロッパ野菜研究会の今後の目標は

今研究会が目指しているのは、ブランド化です。通常は、農協から売れる野菜を推奨され、それを農家が作るという形なのですが、中には栽培が下手な人もいるわけです。そうすると全体の品質が落ちてしまいます。それではブランド化など実現できません。研究会ではメンバーが耕作放棄地などを使って、生産量を増やし、自身が経営者となり人を雇って生産量を拡大していく手法をめざしています。メンバーが中心となって生産管理をすることで品質を落とさない。ヨーロッパ野菜研究会の野菜は美味しくて、安心というブランド化ができると言うことです。消費者が研究会のロゴマークで選んでくれるようになるといいですね。価格決定権があることで、いくつ作れば、売上がいくらになるかという予算を作れる。後継者問題も、ただの農家でなく経営者になることで、次の世代へと、繋げていく事ができると考えています。

イベント関係では、キューピーとの協賛で、プロの料理人向けの料理コンテストを開催します。

これは、さいたまトリエンナーレ2016市民プロジェクトの一貫として実施され、市長杯となっています。

インタビューを終えて           

お忙しい中、長時間お付き合い頂いた北社長。終始おだやかな笑顔でお話いただきました。

最後に、ご自分のレストランの目標を語られた言葉が印象的でしたので、ご紹介します。

「私達は、地域に愛される老舗を目指しています。

  こどもの頃、親に連れられて来たレストランに、

    大人になってデートで来られるなんて素敵じゃないですか」

 

(写真提供 株式会社ノースコーポレーション)

株式会社ノースコーポレーション http://north.co.jp/

さいたまヨーロッパ野菜研究会  http://saiyoroken.jimdo.com/