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農業体験と新しいライフスタイルの提案


田舎の人の「知ってほしいこと」と

都会の人の「知りたいこと」が、つながる瞬間

 

一般社団法人INAKA PROJECT 平野史人代表に聞く

 

平野さんは、さいたま市の東に広がる見沼田圃で、都会で暮らす人々のために農業を中心に自然を体験できる場を提供しています。農家でもない平野さんが、どのような経緯でこのような想いに至ったかを伺いました。



ハノイでの生活そして、アメリカ、ドバイ探訪

平野さんは、学生時代ハワイで過ごされたと聞きましたが?

  私はさいたま市の生まれですが、子供の頃から自然の中で遊ぶ事が好きでした。サーフィンを知り、どうせやるなら、本場ハワイでと、現地の大学へ留学しました。素晴らしい環境の中での生活はとても贅沢な時間でしたが、若い自分には刺激が足りないとも感じていました。また色々な国の人に囲まれた生活の中で、自分の国の事をうまく説明出来ないことに愕然としました。今まで外にしか目が向かず日本の事をあまりにも知らない事に気づいたのです。卒業後も現地でサーフッショプのスタッフとして働いていましたが、一度日本の事をよく知らねばという想いが沸き、帰国する事にしました。


それは海外で生活しないとわからない感覚かもしれませんね。

帰国後は個人輸入のアパレル業を始めました。仕事はうまくいっていましたが昼夜逆転のような生活になり、その生活スタイルに違和感を捨てきれませんでした。自然の中にいては刺激を求め、都会の中では自然を求める。本当はどんな生活がしたいのだろう?自分にはどんな生活スタイルが必要なのだろうと考え始めます。それで自然と都会の両極端な場所を見てみたいと想うようになり、仕事をやめて旅に出ました。

それで、アフリカとドバイへ一人旅に?

アフリカではサバンナキャンプを経験し、自然と同じリズムで過ごす生活をしてマサイ族とも交流する機会を得ました。一方ドバイは、急激に経済発展を遂げた国ですが、そこへ出稼ぎに来ている多国籍の人達と話をすることができました。この旅は自分自身に「豊かさとはなにか」を気づかせてくれる良い体験となりました。そして自分の居場所がどこなのか、わかったような気がしました。

人里離れた場所で暮らすのではなく、経済活動も行った上で、自然とも一定の距離を保ってつきあえる場所(スタンス)です。


自分の居場所をみんなの居場所に

 アフリカ、ドバイの旅を終えて、日本ではなにをされましたか?

  ハワイで感じた日本をもっとよく知りたいという気持ちが、より大きくなりました。それで土地に根ざした生活がしたくなり農家との交流サイト「WWOOF JAPAN」というサイトに登録し、千葉県鴨川市で農的なライフタイルを送る古民家のオーナーの方とコンタクトをとりました。この交流サイトは、労働力を提供する代わりに農業体験をしながら住まいと食事の提供を受けられるシステムです。

 はじめは草刈りばかりで、うんざりしていましたが、そのオーナーと食事をしながら話すうちに、お互いの事が少しわかるようになりました。そのオーナーは、田舎に興味ある人のために古民家を管理して農的なライフスタイルを送りたい人の受け入れをしていました。


鴨川での生活が自分にとって心地良くなってきたある夜の事、「古民家の管理をしていく事は資金的な面でも、労働力的な面でも正直、楽ではない。」少し酔ったオーナーが漏らした一言に、私の気持ちが動きました。自然と古民家の為に何かやりたいと思い、仲間を集め週末に古民家に通う事になったのです。口コミやWEBを通して、だんだん仲間も増え小さなコミュニティが出来ました。そんな中でオーナー指導のもと、米づくりをする事になり、ここで本格的な、「週末は田舎暮らし」のスタイルができあがりました。

INAKA PROJECTの原型ができたのですね。

自分が行き着いたこの居場所「都会と田舎をほどよく往復する生活」は、多くの都会人にとって価値があるのではないかと感じるようになりました。生活を全て田舎暮らしにシフトするのは、かなり高いハードルがあるけど、こうゆうスタンスで自分の田舎を持つことは可能なのではないかと・・・。

LIFE IS GOOD!そしてINAKA PROJECT始動

活動拠点をさいたま市に移すきっかけは?

 オーナーの想いが拡がっていき、古民家を中心に自然体験を提供するスペースは、カフェや宿泊などのサービスも始めていました。雑誌の取材なども入り、任意団体「LIFE IS GOOD」と名乗ることになります。

 

 しかし活動が活発になるとメンバーの負担も増えてゆきます。住いのあるさいたま市と鴨川市の距離的な問題も出てきました。「無理をしても長くは続かない。メンバーが疲弊してしまう前に、地元さいたま市で、しっかりと力をつけよう。」自分達のビジョンが見えて来て、しっかりとした拠点の必要性を感じていた時でした。さらに組織的にも活動の幅を増やせるように、正式に法人化し「一般社団法人INAKAPROJECT」を立ち上げました。

 

LIFE IS GOODとINAKA PROJECTの趣旨を教えてください。

 ホームページでは、このように宣言しています。

地元農家さんと一緒にみんなの『田舎でやってみたいワクワク』をカタチにするPROJECT!!

田舎の人の『知ってほしいこと』、都会の人の『知りたいこと』が繋がる瞬間を大切にしています。

 新しいライフスタイルの提案を趣旨とする団体というかポリシーが「LIFE IS GOOD」

その中の具体的プロジェクトが「INAKA PROJECT」です。

 INAKA PROJECTは、第一次産業者と手を組んで、地域に根ざした活動を中心とします。

まずは見沼田圃をもっと知ってほしい。どんなところで、どうゆう農業をしているのか?そしてどんな課題を抱えているのか。イベントに参加する人に楽しんでもらう事はもちろんですが、それらの問題を少しでも知ってもらえたらと思っています。


農業課題を解決するためのアプローチ

さいたま市ではどのような課題がありますか?

 さいたま市は、子供のころから馴染みのある場所でした。現在のパートナー浅子ファームさんを紹介頂き、周囲の農家さんとも話しをしてゆく中でわかったのは、農業自体の衰退、後継者不足で、耕作放棄地が多くなり、獣害も増えてしまった。全国的問題がここにも存在していました。従来型の農業では営農者を増やせない。それらの問題を私たちのやり方で少しでも改善出来ればという気持ちで活動しています。

 農家さんが持つ経験と技術に、私達のアイディアとマンパワーを合わせれば、新しい形の農業、農地活用が可能ではないかと考えています。

 

現在の活動状況は?

 現在、浅子ファームさんと提携し、畑や田んぼで農作物を作り、都会の人に自然体験を提供しています。最近は山羊の飼育も始めました。僕らが活動することで耕作放棄地を減らすことができ、さらにその場所がイベントなどのスペースとして使えるようになっています。

 また埼玉県との半年に渡る話し合いを経て、7500㎡の公有地の管理委託権を取得できましたので、ひまわり畑や米、野菜作りの体験スペースを拡張できました。さいたま市に来て今年で3年程経ちますが、メンバーも増え個人の体験希望者だけでなく、企業の社会貢献の場としても活用されてきました。


現在どのようなイベントを行っていますか?

 

 大きなものでは、米作りの工程にあわせた、田植え、稲刈りなどがありますが、それ以外に養鶏場の卵を使った究極の卵かけ御飯を食べるイベントなどもあります。自分達で育てた米を羽釜で炊いて、採れたての卵をかけて食べるイベントです。その他に収穫した野菜を料理してビールを飲む、ビアファームなど、ほぼ毎週、なんらかのイベントを開催しています。子育て世代のファミリーに多く参加頂いています。



今後の計画は?

 小規模農家さんでは、作業場所がなく困っています、そういう方達のための共有保管庫や作業場など作りたいと思っています。将来直売所として利用することも出来るだろうし、食の流通の場所というか生産者との交流の場にできればいいですね。一般的な物流を介するのではなく、都会の人達がダイレクトに食のインフラを持つ事ができれば有事の際、大変価値があるのではないかと思っています。

 また街に近い場所にスペースを持ちたいですね、歩いている人がふらっと立ち寄れる場所、自然と都会をつなぐ新しい拠点にできればと考えています。

 来年は、次のステップとして漁業へもチャレンジしていこうと思っています。問題意識を持って、課題解決をするという姿勢は変えず、自分達らしい活動で漁業を活性化してきたいです。

 

平野さん本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

 見沼田圃は、市街化調整区域として、無計画な都市開発から守られていますが、農業の新規参入や新しい形の農業をめざす人からは、障壁の高い地域とも聞きます。行政には、古い制度を守るだけでなく時代にあった対応をして頂きたいと、さいたま市民として思う次第です。

 

お会いするまでは、ワイルドなイメージしかありませんでしたが、目の前で微笑みを浮かべながら静かに話される平野さんは、どこか思慮深い研究者にも見えました。しかし、その精悍な顔つきからは、意思の強さや、たぐいまれな行動力も伺えます。きっとたくさんの仲間から、とても信頼されているのだろうなと感じました。

これからも、ご活躍を楽しみにしています。

皆さんも、週末のイベントに参加してみてはいかがでしょう?


一般社団法人 INAKAPROJECT

INAKAPROJECT 浅子ファーム

埼玉県 さいたま市緑区大崎1730

 

https://www.facebook.com/inakaproject/

問い合わせ:info@inakajapan.com


INAKA PROJECTのFACEBOOKには、笑顔いっぱいの活動動画がアップしてあります。是非ご覧ください。