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マテは甘露の日和あり

地方から上京してきた人間にとって、地元で食べていたものについてこちらの人に興味を持ってもらえることはありがたいことです。

僕は長崎県島原市というところの出身なのですが、総人口で東京ドームを満員にできないくらいの小さな市にもかかわらず、比較的知名度があるようで、地元の名産品についてこれまで幾度となく尋ねられてきました。

ただ、その多くは「ちゃんぽん」「カステラ」といったどちらかと言えば県の名産品のものでした。一応地元ならではの情報を話してあげたいところですが、「ちゃんぽん」については『○ンガーハット』というメジャーなお店がこちらでも展開していますし、「カステラ」にいたってはコンビニでも買えます。ことさら期待に応えられるコメントがありません。

そんな中、名産品というわけではありませんが「地元で食べていたもの」という括りではいくつか思い入れがあるものがあります。

その中の一つが「マテ貝」です。

この貝の特徴は、細長い形状と、何よりもその独特の獲り方にあります。まず、干潮時の砂浜の表面をスコップ等で薄く掘り、マテ貝の穴を見つけます。そしてその穴に持ってきた塩を撒きます。そうすると満潮になったと勘違いした(…かどうかわかりませんが)マテ貝が穴からピョコンと飛び出してくるので、それを捕まえて引き抜きます。

穴の見つけ方や引き抜く際の力具合など、いくらかのコツはあったような気もしますが、その辺はアバウトでも結構獲れていました。僕も父に連れられていったデビュー戦からそこそこ獲ることができていましたし、多分その道のベテランの父にいたっては、しばらくはこの浜ではもう獲れないのではないか、というくらいのペースで獲っていた記憶があります。

そうして大量に獲ったマテ貝の食べ方は、うちでは、茹でたマテ貝に、醤油とマヨネーズを混ぜたもの(うちでは「マヨショー」と呼んでいましたがこの呼び方は全国区でしょうか?)を付けて食べていました。

 

上京後に、何度かこの貝について人に話をしたことがありましたが、マテ貝自体を知らない人も割りと多くいたので、漠然と、この辺では獲れないんだなあと決めつけていました。

しかし、今回この記事を書くにあたって少し知識を拾おうと思ってネットでマテ貝について調べたところ、何と東京湾でも獲れるとのこと。

ということは、探せばお店でも食べられるんじゃないかと思い、某グルメサイトで検索してみると、結構な件数がヒットしました。

思い出の味が口の中によみがえります。これはもう行くしかありません。

早速「沿線近く」「予算○○円以内」「1人でも入りやすい」等のキーワードで詳細検索し、それらの条件でヒットした内の1件、池袋の中華料理店『F』へと向かいました。

お店に入ると注文を取りにきた店員さんから「ニイハオッ!」という元気な声で迎えられました。カウンター席に座ったのですが、その後僕の両隣に座ったお客さんは、店員さんと中国語らしき言葉で会話していたところを見ると、客層は中国の方が多いのかもしれません。

早速お目当てのマテ貝料理を探そうとメニューを開いたところ、マテ貝料理だけでメニューの1ページを占めていました。某グルメサイトにはそのことは書いていませんでしたが、もしかしてマテ貝料理が名物のお店だったのでしょうか。

しかし、気になったのはメニューにある料理写真のマテ貝ですが…何か自分の思い出にあるマテ貝の形と違っているような…。

実際に一品注文してみました。食べる前に行儀悪くマテ貝だけほじくり出して確認したところ、メニューにある形状よりは、思い出の中の形状に近いようです。でも、まだ完全合致はしていません。

食べてみると、これは間違いなくマテ貝の味です。あぁ、「マヨショー」を付けて食べたい…無理だろうけど(当たり前)。

もちろんマヨショー無しでも大変美味しくいただきました。

お会計の際にニイハオの店員さんに話をしてみました。

「マテ貝料理っていつまで食べられるんですか?」

「いつでも食べられますよー」

「でもメニューに季節限定ってありましたけど…」

「あー、えーっと、9月くらいまでですかねー」

ということは、残りのマテ貝料理もまだまだ食べられる機会はありそうです。

あと、これは聞く前から結果が見えているような気もしますが…

「こちらのマテ貝はどこで獲れたものですか」

「これは中国ねー」

…納得。

いくつかの気づきがありましたが、何よりも、都内でもマテ貝が食べられることがわかって満足です。

とりあえず「マヨショー」を付けて食べるのは、帰省時まで持ちこしとしておきましょう。

なお、ただ食べるだけよりは、獲るところから体験したい方は、ぜひ島原半島観光連盟までお問い合わせ下さい。(※今年度の体験プログラムは終了されたそうです)

http://www.shimakanren.com/programs/detail/57

なまおさむ