~10年先の農業と地域のために~


野菜と向き合う百年企業

 

 

 

 

 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて第4回は、日本でヨーロッパ野菜を栽培できるように品種改良されたトキタ種苗株式会社さんです。トキタさんは、さいたま市に本社を置く今年創業百年を迎える種苗メーカーです。今回、開発普及室の佐波光咲 d-プロジェクトリーダーにお話を伺うことが出来ました。

 

  




 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて その4

 

グストイタリアプロジェクト発進

 

Qグストイタリアプロジェクトを立ち上げられたのはいつでしょうか?

 イタリアのボローニャにある支社でトマトベリーをはじめとするトキタ野菜の現地販売を進めていました。現地イタリア人スタッフの「日本野菜を売るだけでなく、その逆があってもいいじゃない?」という一言がはじまりでした。イタリア野菜は種類も豊富だし、なんといっても日本人はイタリア好きですし。これは日本でも売れるだろうと。プロジェクト名の「グスト」は、イタリア語で「美味しい」「好き」という意味を持ちます。野菜のイメージをそのままプロジェクト名にして、「イタリア野菜を日本の食卓に」をモットーに、2010年からグストイタリアプロジェクトを進めてまいりました。現在では35種類を展開しています。

 

Qグストイタリアシリーズの種は、ネット販売もされていますね。

当初はイタリア野菜に馴染みもなかったので、種を置いてもらえない店舗もありました、地方では新しいものに拒否反応もあったようです。またご存じのとおり業界全体の人口減少と高齢化が進み、種を販売している小売店も減ってきています。そのため生産者が遠方まで買いに行かなければいけないケースも多くなっています。そのためにイタリア野菜に興味を持ってもらった生産者さんが、つくってみたいと思ったときにすぐに手に入れられるようにネット販売もしています。

 

Qイタリア以外にも海外拠点がありますね

 それまでにも、中国、インドといったところで、支社を立ち上げています。現在は米国、チリにも拠点があります。基本は種を収穫するためのものですが、現地へ日本野菜の種も販売します。インドのニンジンは約3割がトキタの種です。カリフラワーの改良品種カリフローレは、南アフリカでつくったものをイギリス、オーストラリアのスーパーで販売しています。日本のネギも海外で好評ですよ。

 

全国に広がるイタリア野菜

 

Qヨロ研との出会いは

 新潟県燕市と三条市の生産者グループ「燕三条イタリア野菜研究会」でトキタのイタリア野菜を栽培していることを新聞で知った、ノースコーポレーションの北さんから、「さいたま市でも栽培できないか?」と問い合わせがあったのがきっかけです。

 当初、生産者もはじめて栽培する品種でしたので、従来品種のなかで似た野菜の栽培方法を参考にし、先代(親)にアドバイスをもらいながら栽培をはじめたと聞いています。弊社も栽培指導をしましたが、各地域の異なる環境の中で、どう調整していけばいいかまでは情報がありませんでしたので、技術の面でも挑戦だったと思います。

 

Q今年で4年目を迎えて法人化もしましたね。

 品質保持という目的もありますが事業主同士の集まりというのは、仲良しグループになってしまいがちです。法人にする事で各人が明確な役割と責任を持ち、片寄りがちであった事務仕事も均等に配分されたと思います。

 

Q現在では全国各地で栽培がはじまっていると聞いていますが

 グループ単位だけでも20箇所、個人の生産者さんを入れるともっと多くなりますね。

 

Q産地リレーもトキタさんが主導されていますが、どのような形で?

 一つは産地同士の情報交換です。生産者は、他の地域情報はわかりませんので弊社のような会社が繋いでいくことで、お互いの情報を知り得ます。さいたまヨーロッパ野菜研究会でいえば青森との連携がはじまっています。お互いに相手の畑に出向き、「何が出来るか?」を話しあったりします。一度交流ができるとその後も、SNSなどで、生産者同士が細かいニュアンスで教えあったりしているようです。弊社もフォローしていますが、気軽に生産者同士で話をした方がいい場合も多くありますから。

 また、さいたま市では暑い夏の時期は生産が減りますので、流通上で欠品がでないようにその時期は青森で栽培された野菜が市場に供給されるという具合に、全体を安定させることを期待しています。

 

品種改良とは先祖を探す旅、

 

Q品種改良についておきかせください。

 イタリア野菜で言えば、イタリアの苗を日本に持ち込み弊社のブリーダーが、栽培する環境にあわせて品種改良し、それを海外へ持ち出して種をつくる(種を増やす)というイメージです。

 

Qなぜ海外での工程が必要なのでしょうか?

 国内の種をつくる人達の高齢化、人口減少という問題もありますが、日本は土地が狭いので同一の環境を広範囲に確保するのが難しいのです。標高差などの問題で、200m先では環境が変わってしまうような事があるのです。それで均一な環境を広範囲に確保できる海外に求める事になります。

 

Q環境にあった品種をつくるというのは、弱い部分を持つ品種にその部分が強い品種を掛け合わせるということなのですか?

 イタリア野菜の種を日本に持ってきて、そのまま栽培してもなかなか環境に合わずにうまくいかないことが多くあります。弊社では日本の環境で栽培を繰り返し、適応能力の高い品種を採種します。もちろん、日本の暑い夏や寒い冬の環境に耐えられるように掛け合わせも行います。

 例えば、カリフローレには60日タイプと80日タイプの2種類があります。茎が伸びるタイプのカリフラワーに暑さに強いタイプのカリフラワーを掛け合わせたものと、寒さに強いタイプのカリフラワーを掛け合わせたものと言うとわかりやすいでしょうか。親株の特徴を基に新しい品種を作っていきますので、その親株のことはもちろん、その親、さらにその親のこともわかっていないと、より良い品種は作れないと言えます。

 そうして掛け合わせてできたものの中から、より元気に生き残った株を選抜します。選抜した株から種子を採るのですが、採種は非常に難しい場合が多いです。日本は湿気が多いので、カビや虫の害が多い時期もありますし、安定しない天候とも戦わなくてはなりません。大規模 採種を海外に頼る理由はこの辺りにもあります。

 採種技術としては、例えばアブラナ科では人為的に蕾を開いて自身のおしべとめしべで受粉させます。この時に他の花粉が入らない様に袋をかぶせたりするのですが、多くの株数を扱うので気の遠くなるような作業です。

 

Q花粉レベルで他の影響を受けないようにとは、ずいぶん困難な作業だとおもうのですが?

 熟練の交配技術が必要です。いまでもピンセットで実施していますが、一人前に交配できるようになるには3年はかかりますね。

 

時を重ねた大切なもの

 

 私たちが種をつくり、生産者が野菜を育て、消費者の口に入るまでには、最短でも10年程度はかかります。自然を相手にしている事ですので、こちらの都合はとおりません。時間はかけなければいけないのです。

 よく仕事は3年ひと区切りといいますが、私たちの業界ではもっと長いスパンで、モノを見て行かなければいけません。係わった仕事が目に見えるまで10年はかかるのですから。

 イタリア野菜については、年に数十件も、流通業など多くの方々から、問い合わせを頂きます。イタリア野菜はキャチーなので。新しいサービスを作って行く上では便利なもののようです。しかしイタリア野菜は生産者、レストラン、行政、私たち種苗メーカーが時間かけて築いてきたものです。あたらしい野菜が人の口に入るまでに、どれだけの事が必要か、個人の利益だけではない全体の利益、地域の人達の事も考えたもので無ければいけません。そのような想いを共有できない方とは一緒に仕事はできないと考えています。

 弊社は、今年創業100年となりますが、これからもこの感覚は持ち続けなければいけないと思っています。

 

 お話を伺った場所は、フローリングも美しい真新しいロビーでした。1年前に竣工されたオフィスは仕切りのない、フリーアドレス制を採用されたそうです。以前より緊張感が増したようですが、社内の交流は盛んになったそうです。一見相反するようですが、長いスパンで物事を考えるためには、積極的に刺激を受けようという姿勢が必要なのかもしれません。

 佐波さん、本日はありがとうございました。

 インタビューを行った日は、6月にしては日差しの強い暑い日でしたが、終了後は良い風が吹いていたような気がしました。いままで、さいたまヨーロッパ野菜の取材をさせて頂いた日の記憶が清々しい印象なのは、気候のせいではないと思います。           (2017.6 彩邦)

トキタ種苗株式会社 http://www.tokitaseed.co.jp/index.php

グストイタリア         http://www.gustoitalia.jp/about/index.html


Gusto Italia(イタリアを食べよう)
Era molto buono!(美味しかったぞ!)

 

メンバーTです。

日本産イタリア野菜のイベント「Campo Prova in TOKYO 2017」で、頂いたサンプル食材を食べてみました。品種は、カリーノケール、フラガール、カリフローレの3種です。

「イタリア」野菜ですが、いつもどおりに食べてみたいと思います。



●カリーノケール

初めて見る葉っぱの形状です。さてどうしましょう。生で食べられるのかしら?パッケージ裏のQRコードにスマホをかざしてサイトを開いたところ、生のまま食べれらることが判明。サラダに決定!。パッケージの前面で紹介されていた「ケールと豚肉のパワーサラダ」はとてもおいしそうなレシピでしたが、こちらは次回にトライです。

 

まず 洗います。

葉っぱが水をはじき水玉ができ、とてもきれいで、思わず見入ってしまい手が止まります。

 

しっかりした葉っぱです。

お弁当のおかずの間にいれてもよいかもしれませんね。

 

濃い緑色はなぜか栄養がありそうな気になります。

 

「ツナとケールのサラダ、半熟タマゴとフラガールを乗せて」

1.カリーノケールを2cm幅くらいにカット

2.ツナを適量のせる

3.やや半熟目の卵を粗く刻み、のせる

4.トマト(後述)をのせる

5.トッピングにローストアマニ粉末をふりかけ、中華風ドレッシングを選択

 

見た目からパセリのような強い風味を想像しておりましたが、くせがなく食べやすいです。

食感から熱に強そうな感じが伝わります。加熱メニューも問題ないでしょう。

フリルでボリュームがあり、見た目以上にお腹いっぱいになりました。

サラダでしたら1パックで2人分くらいになりました。

 

 

●フラガール

サンプル品の袋の中に小さな種が2粒はいっておりました!

危うく気が付かずに捨ててしまうところでした。

この1粒からたくさん実るところを想像すると楽しいですね。

この種は編集長へ託しました。よろしくお願いします。

 

 

 前述のサラダとしてそのまま食べました。

甘い! 肉厚で食べごたがあり、一粒でも存在感充分です。

こちらも、熱を加えてもおいしそうです。

オーブンで焼くとイタリアンな感じがします(個人的見解)。

 

「ツナとケールのサラダ、半熟タマゴとフラガールを乗せて」

 



●カリフローレ

カリフラワーを小分けにした感じです。カットがしやすいです。

お味噌汁の具として試してみることにしました。

 

「カリフローレと茄子と豆腐の味噌汁」

普通の味噌汁なのでレシピ省略です。

 

熱を加えても食感よくいただけました。甘いです。

生でも食べられると書いてあったので、調理前にかじってみましたが、そのままでも充分おいしい! バーニャカウダで食べたら止まらなくなりそうです。

 

以上、イタリア野菜を「イタリア感」を出さずに食べてしまいましたが、おいしかったです。

目新しい野菜でしたが、これから店頭で見かけた時はいろいろと手に取ってみようと思います。

 

 

最後にメンバー I によるイタリア感あるレシピをご紹介します。

 

「A forma di Vesuvio Insalata(ア・フォルマ・デ・ベスピオ・インサラータ)」

 

1.下準備として、タレ(生姜+ニンニク+醤油(それぞれ適量))を合わせ、豚肉の小  間切れに混ぜ合わせて10分程度寝かせます

2.お皿に生のカリーノケールを敷きます

3.真ん中に茹でたカリフローレをのせます

4.3の上に、チェダーチーズを細かくさいの目状に切ったものをのせ、真ん中にトマトをトッピングします

5.1で準備した豚小間を焼き、サラダの周辺にソースといっしょにのせます

7.トマトの周囲にマヨネーズとマスタードを添えます

6.最後にオリーブオイルを適当量ふりかけます

後は、チリ産のメルローを合わせればOK!

 




 

イタリア野菜たちとの出会い

Campo Prova in TOKYO 2017レポート

 

2017年6月6日 天王洲アイル「第一ホテル東京シーフォート」

 

 さいたまヨーロッパ野菜をはじめ、全国のイタリア野菜生産者が集うCampo Prova in TOKYO 2017は、全国20団体以上が集まる、展示商談会です。通常は関係者限定でしたが、主催者のトキタ種苗さんのご厚意で、見学する事ができました。

 

会場は、生産者同士の情報交換や、流通、販売の方々との出会いの場です。

 

さて、受付で入場証をつけて会場へ。 

すでに来場者があふれています。

  エントランスでは、イタリア野菜のある生活の提案展示。



キューピーとのタイアップで、新しい食べ方の提案もおこなっています。 各生産者のブースにも大勢の人がいらっしゃいます。

 

会場内は、移動も困難なほど混雑しています。

あちらこちらで、プロ同士の真剣な話しが飛び交います。

 

 

 会場両サイドに設置された試食コーナーにはイタリア野菜のサラダやソテーはもちろん、イタリア野菜入りおにぎりなどもあります。

 

また、スモークサーモン、ローストビーフなどもあり、マッチングの良さもアピールしていました。

 

いずれもレベルの高い料理でゆっくり食事したくなります。

 

会場入口の生産者マップ。27箇所もの生産者たちが!


 

 もちろんさいたまヨーロッパ野菜研究会の北社長、研究会事務局の福田さんもお見かけいたしましたが、次から次へと商談に入られていたので、ご挨拶は控えさせていただきました。

 

Campo Prova in TOKYO は、トキタ種苗さんのグスト・イタリア生産者が一同に集います。

みなさんチャレンジ精神をもって、新しい農業を実践されていると感じました。

各地域にも、コーディネーター的存在がおられるようで、地域の支援などをうまく活用しておられるようです。

 

参加を許可頂いた、トキタ種苗さんありがとうございました。

受付で頂いた、イタリア野菜のサンプルを食べるのを楽しみに会場を後にしました。

トキタ種苗株式会社 グストイタリア http://www.gustoitalia.jp/

 


~農業の活性こそが、

  地域文化を守ることにつながる

 

 

 

「さいたまヨーロッパ野菜研究会をたずねて」第 3 回は、研究会が独自の販売方法を模索している時、事務処理の課題にぶつかりました。その時に管理システムの構築という面で支援を行った、芝浦工業大学をたずねました。今回は、支援プロジェクトを指導された、山崎敦子教授からお話を伺うことができました。

 

 



 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて その3

 

 

お互いが引き合ったような、研究会との出会い

 

Q さいたまヨーロッパ野菜研究会への支援活動を耳にしたとき、工業大学と農業という結びつきは以外に思えたのですが?


 文部科学省が推進する、地(知)の拠点整備事業「大学COC(Center of Community)活動」の中でプロジェクトのひとつとして取り組みました。
 「システム工学特別演習」という授業があり、システム理工学部専攻の大学院生にとっては必修となっています。その中で企業や地域と連携した課題解決をテーマに選んだ学生が、産学地域連携 PBL(Project Based Learning)という授業の形で取り組みました。これは地域の課題解決を通して、実践的学習を行うのが目的です。そんな中でヨーロッパ野菜研究会の活動を知り、さいたま市産業創造財団を通して協力体制ができました。

 

Q 研究会も出荷関係の事務処理問題をどうしようかと考えていた時ですね。
  地(知)の拠点整備事業について教えていただけますか?

 

 芝浦工業大学は「地(知)の拠点整備事業」に対し、「まちづくり」「ものづくり」を通した人材育成推進というアプローチで採択されました。我々は、このアプローチを「地域とともに生き、地域とともに学生を育む実践教育の場」と捉えています。このプロジェクトは農業への支援だけでなく、キャンパスのある芝浦、豊洲、大宮の各地域において「まちづくり」「ものづくり」をテーマに周辺地域と連携し、20のプロジェクトに取り組んでいます。それぞれのプロジェクトにおいて、地域が抱える課題を抽出・分析し、その解決を図るプロセスを PBL(Project Based Learning)として教育課程に組み込み、「まちづくり」においてはシンポジウムや成果報告会、「ものづくり」においては製品化・事業化・技術イノベーションという形で地域に還元することを目指しています。

 

システム化を通して、お互いを理解する

 

Q 農業現場からの課題ヒアリングは、スムーズにいきましたか? 

 

 生産者は、二十代、三十代という若い世代がほとんどでしたが、当初システム導入に対して違和感というか、反発もありました。「スマホには馴染みがあるが、パソコンとなると・・・・」という反応で、正直びっくりしました。しかしこれが生産現場の現実だと思います。しかし会話を重ね、システムを実際に使ってもらうと、理解してもらえました。

  学生たちも、取り組み当初と完成時では生産者へのイメージがかなり変化していきましたね。仕事を通してお互いに理解を深めていく。これが実践学習の素晴らしいところです。

 

Q 学生たちのシステム化のアイディアについて、先生はどのように思われましたか?

  

 学生のアイディアは経験がない分、斬新なものが多いですね、本当に実現可能か?と思うような突飛なものでも、我々がサポートすることで、プロトタイプになっていきます。そこから徐々に現実的なものへ仕上げていきます。それらが「受発注システム」、「スケジューリングシステム」となっていきました。現在は、さいたまヨーロッパ野菜研究会のほか、石川県珠洲市のベジュール合同会社、奄美大島の農家さん、市内の規模拡大を計画中のトマト農家の3件に対して、それぞれの環境に合わせカスタマイズしながらシステムの提供が出来るよう準備をしています。

 

生産者の経験と勘があって、完成するシステム

 

Q スケジューリングシステムについて教えてください

 

 当初は、ヨーロッパ野菜の産地をつなげて、それぞれ場所の栽培状況が把握できるシステムを、物流サイドからも見る事が出来るようにと考えていましたが、仕入れ側がシステムをコントロールすることになると、価格交渉の道具にされてしまうことを危惧し、現在は生産者グループの情報共有システムとしています。
 いままでは、同じグループの中でも、だれが何を作っているのか?それはどのくらいの生育状態なのかも、リアルタイムにはわからなかったのです。また栽培記録を残す事は、次年度以降に役立ちます。栽培する中で「おやっ?」と思った時、昨年はどうだったか確認する事ができます。「昨年のこの時期」、「こうゆう気候で」、「自分達がどうしたか?」「それによって作物はどうなったか?」という記録があれば、「どうしたらいいか?」「どうしてみようか?」がわかってきます。それらのデータが蓄積されてくれば栽培が安定する。育てるものが新種であればなおのこと、栽培方法を読むことができる、気候をはじめとする環境に対して、どのような方法を取れれば適切に栽培できるのか?データを取り、記録をすることで、対処法がわかってきます。もちろん環境は毎年変化しますから、全てデータ化で解決する問題ではありません。しかし対処する方向がわかってくるのです。さらに IoT を活用した温度変化、照度などのデータをクラウドに上げて、気候と生育状況を記録すればより高度化できます。
 このシステムはサジェスティングのシステムではあると思いますが、しかしそれですべてが解決できるわけではないし、農業は気温、照度、地形、土の組成、風などファクターも多く複雑です。ですから、生産者の持つ経験や勘といった要素も大切になってくる。採取したデータを可視化し直感的に捉えられる形にする事で生産者の判断精度を上げる。そういうシステムで良いと思っています。

 

次の世代へ継承するもの

 

Q 受発注システムについてはいかがでした?

 

 システム導入以前は、1 年間で何がどれくらい出荷したか正確な数字を把握できていなかったようです。どの野菜が稼ぎ頭で、どれがロングテールなのか、正確に見えてくることによって、将来の設計ができるようになります。これもデータの可視化ということだと思います。
さいたまヨーロッパ野菜研究会の目標である「農家から農業経営者となる」ためには、自分たちのやっている事がはっきりわからないといけません。記録を残す、データとして抑える事が大変重要になってきます。栽培から出荷まで、システム化が進む事で、次年度の計画が立てられる。どれくらいのコストをかければ、どれくらい儲かってという計算ができれば、自分の子供達へもある程度安心して譲ることが出来る。次の世代へと継続していけるのです。

 

Q 後を継ぐ人がいないのは、大きな問題ですね

 

 農業経営が成立すれば、人を雇うこうともできます。その際もシステムがあれば、別の場所で従業員が栽培をしていても、生育度合いなどのチェックができるし、ノウハウの共有も行いやすい。品質にムラがでない。経営が拡大していけば、地域に人が増えていくと思うのです。すくなくとも流出は防げるのではないでしょうか。
 以前、講演で母校を訪れた際、街を見てずいぶん衰退していると感じました。自分はその場所から出てしまった人間だけど、故郷のためになにかできないか?「土地に根ざした産業に対してなにかできることはないか?」という思いが強くなりました。農業支援のプロジェクトを担当したのもその気持ちがあったからです。それは現在もモチベーションとなっています。

 

システムに込めた想い、生産者を守ることは、地域の文化を守るということ

 

 日本各地には、地方特有の「祭り」がありますね。祭りはもともと五穀豊穣の願いや大地への感謝をこめて行うものです。そしてそれらを支えているのは、当然第一次産業に従事する人達です。その人達の生活を守ることは、地域の文化、日本の文化を守ることにも繋がっていく。故郷にもどるたびに、朝市や祭りがだんだんと寂れていくのは、切ないものです。すばらしい文化であるのに・・。当事者さえも、その魅力に気づいていない事もある。このまま失ってしまってはもったいない。もっとアピールをしていかなければ、そのためには地元の人の力が必要。農業経営はそういうことにつながっていくひとつの要素だと思います。
 物流向けにシステムを構築するのは、キャッチーで、儲かるかもしれない。しかし、いかにしたら安く生産者から仕入れられるかという事が目的となってしまう。物流側は儲かるかもしれない、でもそれで生産者が疲弊してしまっては元もこもない。そういうシステムだけにはしたくありませんでした。
 今後、他の地域からでも支援要請があれば、積極的に検討したいと思っています。しかし品種、気候、地形、地質、など様々な要素が影響してくるので、対象に合わせてカスタマイズの必要はありますね。

 

インタビューを終えて           

 山崎先生のご出身は石川県だそうですが、この支援活動の動機を「故郷を出てしまった者のノスタルジーかもしれない」とつぶやかれていました。だれもが持っている感情ですが、行動に移すには膨大な熱意が必要だと思います。これからもご活躍を期待しております。
緑に包まれた芝浦工大の大宮キャンパスには、気持ちのいい風が吹いていました。

 

芝浦工業大学 大学 COC 事業   http://plus.shibaura-it.ac.jp/coc/

 

山崎敦子 教授プロフィール

http://www.shibaura-it.ac.jp/about/gender-equality/researcher/field/yamazaki_atsuko.html



~地産地消と食文化の醸成

  子ども達から得られるもの~

 

ノースコーポレーション代表取締役 北康信社長に伺いました。


前回事務局へお訪ねしました、さいたまヨーロッパ野菜研究会ですが、今回は研究会の産みの親であるノースコーポレーション代表取締役北社長にお話を伺いました。

北さんは、さいたま市内でイタリアンレストラン4店舗とワインのオンラインショップを経営されておられます。レストランでは、新鮮なさいたま産ヨーロッパ野菜の他、埼玉県産ビーフなど地元の食材を使った料理を食べる事ができます。

 


 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて その2

学生起業~イタリアンレストラン開業

実業家の家に三人兄弟として産まれた北社長ですが、厳しい父親の意向で、家業を継ぐこと無く、自身で学生起業されます。

 

Qなぜ、食の世界を選ばれたのでしょうか?

人の生活に欠かせない衣食住のうち、「衣」に関して当時ユニクロが成功し産業構造が変わっていった難しい時期にあり、「住」は父が建設業であったので別の業界を選びたいと思いました、「食」であれば、必ず需要があり、まじめな事業をしていれば生き残っていけると考え、1995年に会社を設立し、1997年に土地勘のあるさいたま市ではじめの店を出すことになりました。

 

Q当初からイタリアンレストランですか?

まだ学生だった事もあり、ベテラン職人を抱えて店の経営をするのは大変だと思いました。そこでファストフードのチェーン化を狙って、当時アメリカで流行りはじめたロティサリーチキンの店をオープンしました。しかし色々工夫をしていったのですが、1年間赤字続きでした。やはり立地と客単価のバランスが取れていなかったのだと思います。そこから試行錯誤し、イタリアンレストランをオープンしました。 

 

社会から必要とされる企業、人であること、

生き残っていくために、あえて遠回りをしていこう


Q 現在北さんは、さいたまヨーロッパ野菜研究会会長のほか、日本ソムリエ協会理事、埼玉武州和牛PR大使、シェフクラブSAITAMA 事務局長などを努められ、数々のPRイベントを精力的に実施されていますが、どこでそのノウハウを得られたのですか?

当初、お酒の勉強をするために日本バーテンダー協会に所属していました。その時に埼玉支部長の方と数々のイベントを行った事が、いま活きていると思います。現在それぞれのイベントも回を追う毎に活性化して、10月2日には、ソムリエ協会主催、イタリア料理協会協力で「SAItaly FESTA 2016」を開催し、両協会のトップ田崎真也、落合務両氏による、初のコラボイベントがさいたま市で実現しました。両氏の初共演がさいたま市であったなんて、うれしい事です。さいたま市はワイン、パスタ消費量、トップクラスです。これからも、イベントを通じて、食の街である事をもっとアピールしていきたいと思っています。

 


Q なぜそれほど、PRイベントに力を入れるのですか?

ある資料に企業の生存率は、10年で6%、30年では0.02%と書かれており、その数字を見たときに愕然としました。20代で起業し、これからまだ先の長い自分が、どう生き残っていけばいいか悩みました。その時、ふと目にしたポスターの「会社も社会の一員です」という言葉を見て、社会から必要とされる企業、必要とされる人であれば、ニーズがあるということ、生き残ることができるのではないかと考えました。「それならば、あえて遠回りをしよう、無駄と思える事もしていこう」と決意しました。きっとそれらが将来の糧になると考えました。「イタリア料理という中で、なにをしていくかという事より、イタリア料理を食べる人達が増えるためには何ができるか」。マーケットを拡大していけば、自分達はこれからも必要とされるだろう。そのために、コストがかかるPRイベントや、地域貢献も行っています


 

子どもたちの自慢、イタリアン給食!

Q 地域貢献といえば市内の小中学校にシェフを派遣し、イタリアン給食を作るという試みをされていますね?

さいたま市は現在、自分の学校で給食を作る自校給食を市立の小中学校全校(160校)で実施しています。そういった動きの中で、市内のレストランが協力して、市が指定した20校を対象にシェフが学校へ出向き、子ども達にイタリア料理の給食を食べてもらうという活動をしています。子ども達も大変喜んでくれて、通常残食率は10%前後といわれているところ、0%を達成しています。

 

Q さいたま市の取組みでもあるのですね。

しかし、さいたま市で予算が組んであるのは20校だけです。これだけでは、パフォーマンスだけになってしまいます。シェフ給食を通し、食文化を学び、子ども達が自分の達の住んでいるさいたま市に誇りを持ってもらえるようにするのが目的ですから、もっと数が必要です。指定校以外でも学校から希望があれば、私達は出張しています。目標としては各学校で3年に1回はシェフ給食が実施できるようにしたいです。

そのためにはレストランシェフと普段給食を作る管理栄養士との間でもっと情報交換をして行く必要があると思います。シェフが来なくとも管理栄養士の方だけで作れるようになれば、子ども達は、もっとイタリア給食の体験ができます。また1校につき、シェフを2~3名派遣する必要がありますので、レストラン側の負担も大きい、規模の小さい店では営業に支障がでますが、市の援助ではフォローできないのが現実です。ランチ営業を休んでも補填できるぐらい予算を増やすなど対策をとり、協力できるレストランの数を増やす必要がありますね。

子ども達が大人になった時に、友達へ「自分達の学校給食にイタリア料理があった」と自慢が出来るなんていいですよね。自慢できるものがあることが、郷土愛に繋がっていくと思います。それを我々は食を通して育てていこうと考えています。


 

自分で育て、食べる喜び

Q 子ども料理教室も開かれていますね

現在まで、1000人以上の子ども達が参加しています。先日はさいたま産のバジルをつかい、バジルソースのパスタを作る教室を行いました。会の最後に、今度は家でバジルを育て、料理して食べる事ができるようにバジルの苗を配りました。育てる喜び、食べる喜びを味わってもらう。これが食育であると思います。

 

Q レストランで働かれている方も地元の方と伺いましたが、やはり地元の雇用を増やして行こうというお考えですか?

さいたま市では雇用を作るというより、優秀な人材の都内流出をとめようと考えていました。

青山、六本木で働くというと、カッコはいいかも知れないけど、だからなんだ?という事です。産地の分かる、生産者の分かる安心な食材で、「自分の納得がいく料理を提供できる事がどれだけ価値がある事か」と、当社ではその価値観を大事にしています。

 

 

さいたまヨーロッパ野菜 地産地消成功の秘密は物流にあった

Q 研究会の野菜は配送ルートを通常と異なるものを使用されていますが?

色々な地域で、結局地産地消が軌道に乗らないのは、配送上の課題をクリアできなかったことが大きいのではないでしょうか?レストランが仕入れるヨーロッパ野菜は、1回にそれほど大量ではありません。数種類を少しずつという事になります。ですから通常の八百屋さんのルートを使っては、配送側が採算割れになってしまいます。そこで目をつけたものが、飲食店が毎日発注かけるもの、「酒」と「乾物」です。それらの配送車に乗せてもらえれば、配送側も負担が少なくなると考えました。お酒の配送は、幌トラックなので野菜は詰めない。そこで乾物を扱う関東食糧さんに交渉し協力を得ました。現在では1000軒のレストランに配送しています。


Q 大切なノウハウを教えてしまってもよいのですか?

目先の利益だけを考えれば、農家1軒とレストラン1社だけの交渉で良い訳です。しかし我々の目標である「イタリアンを食べる人達を増やしていこう」という事を考えれば、それでは駄目です。産地もレストランもそれぞれが、ボリュームを持たなければ意味が無い。

青森、石川など日本各地で、ヨーロッパ野菜を作るグループが出来ていますが、それらにも栽培や配送についてもアドバイスをしています。全国各地それぞれの地域で気候が異なりますから、特徴が出す事が出来ますし、当然収穫日もずれて来るわけです。そのことでいろいろな種類の野菜が一年を通して、確保できるわけです。

 

Q 現在、研究会の野菜は収穫してからどれくらいの時間で店に入るのでしょうか?

各レストランには集荷から約1日で、各レストランに届きます。当社では、研究会メンバーであり、シェフの一人が生産地の近くに住まいがありますので、朝直接引き取り、その日のメニューに出す事ができています。

 

 

さいたま産ヨーロッパ野菜 海外での評価は?

Q 現在は、生産者が価格を決めて出荷しているそうですが、このまま全国で生産量が増えてくると、値崩れを起こすような事はおこりませんか?

現在輸入に頼っている量までは、シェアがあると思っていますので、それを超えた時には、輸出をすればいいと思っています。たとえば香港などは、元々イギリス領であった事もあり、西洋野菜を食べる習慣がありますが、現地で販売されている野菜は、あまり鮮度の良いものではないようなので、市場としての可能性はあると思っています。

 

Q イタリアの文化交流事業イタリアの文化交流事業日伊国交150周年記念事業の中で、さいたまヨーロッパ野菜が評価を得たと聞きましたが

川越スタイルクラブとういう川越の文化を伝える活動をしているグループが、以前からニューヨーク、フランスなどでPRイベントを行っていましたが、今回イタリアで行う事を知り、相乗りという形で参加させて頂きました。現地に行ってみてわかったのですが、イタリアフィレツエで一番歴史があり、格式のある料理学校だったのです。本場の権威ある料理学校からお墨付きをもらった事で、研究会メンバーのモチベーションもさらに上がりました。

 

 

ブランド化と農家が経営者になるという事

Q ヨーロッパ野菜研究会の今後の目標は

今研究会が目指しているのは、ブランド化です。通常は、農協から売れる野菜を推奨され、それを農家が作るという形なのですが、中には栽培が下手な人もいるわけです。そうすると全体の品質が落ちてしまいます。それではブランド化など実現できません。研究会ではメンバーが耕作放棄地などを使って、生産量を増やし、自身が経営者となり人を雇って生産量を拡大していく手法をめざしています。メンバーが中心となって生産管理をすることで品質を落とさない。ヨーロッパ野菜研究会の野菜は美味しくて、安心というブランド化ができると言うことです。消費者が研究会のロゴマークで選んでくれるようになるといいですね。価格決定権があることで、いくつ作れば、売上がいくらになるかという予算を作れる。後継者問題も、ただの農家でなく経営者になることで、次の世代へと、繋げていく事ができると考えています。

イベント関係では、キューピーとの協賛で、プロの料理人向けの料理コンテストを開催します。

これは、さいたまトリエンナーレ2016市民プロジェクトの一貫として実施され、市長杯となっています。

インタビューを終えて           

お忙しい中、長時間お付き合い頂いた北社長。終始おだやかな笑顔でお話いただきました。

最後に、ご自分のレストランの目標を語られた言葉が印象的でしたので、ご紹介します。

「私達は、地域に愛される老舗を目指しています。

  こどもの頃、親に連れられて来たレストランに、

    大人になってデートで来られるなんて素敵じゃないですか」

 

(写真提供 株式会社ノースコーポレーション)

株式会社ノースコーポレーション http://north.co.jp/

さいたまヨーロッパ野菜研究会  http://saiyoroken.jimdo.com/

 


 

さいたまヨーロッパ野菜研究会を訪ねて


さいたまヨーロッパ野菜研究会は、地元レストランシェフ達の「もっと新鮮なヨーロッパ野菜をつかって料理を提供したい!」という思いから、若手生産者さんを中心に、種苗メーカー、卸売業者、行政が手を組み、動き出したプロジェクトです。今回は、事務局の福田さんにお話を伺う事ができました。

福田さんは、(公財)さいたま市産業創造財団に所属されている経営コンサルタントさんです。農業経営以外にも、広報の面から、地域発展のためヨーロッパ野菜研究会を支援されています。

 

Q:本日はよろしくお願いします。早速ですが研究会の発足の経緯を教えてください。

埼玉県内のレストランシェフ達が集まる「シェフクラブSAITAMA」の中で、「ヨーロッパ野菜の輸入品は、価格も高く、どうしても鮮度が落ちる、地元でヨーロッパ野菜を作ってくれる農家があれば、新鮮素材で料理を提供できるのに」という要望が出ました。そこで、ヨーロッパ野菜を日本向けに品種改良を行っていたトキタ種苗に、コンタクトを取り、2013 年1 月に、生産者向けに勉強会を開き、作ってくれる方を探しましたが、栽培経験のない品種の事、なかなか協力を得られませんでした。そこで市の農政課さんを通じ、直接生産者さんに交渉しましたところ、全国の若手農業者で組織されている4H クラブ※の中の岩槻4H クラブ(さいたま市)が交渉に応じて頂きました。

ここにヨーロッパ野菜研究会の原型が出来あがりました。

※4Hクラブ(農業青年クラブ): 20~30 代前半の若い農業者が中心となって組織され、農業経営をしていくうえでの身近な課題の解決方法を検討し、より良い技術を検討するためのプロジェクト活動を中心に、消費者や他クラブとの交流、地域ボランティア活動を行っている。現在、日本全国に約850 クラブ、約1 万3 千人が在席する。4H とは、農業の改良と生活の改善に役立つ腕(Hands)を磨き、科学的に物を考えることのできる頭(Head)の訓練をし、誠実で友情に富む心(Heart)を培い、楽しく暮らし、元気で働くための健康(Health)を増進するという、同クラブの4 つの信条の頭文字を総称したもの。

 

 

Q:立ち上げ当初は、相当苦労されたと思いますが?

日本向けに品種改良されたといっても、まだ国内での栽培実績が少ないため、病気や害虫の対策など、デリケートな扱いが必要でした。葉物野菜のノウハウはあってもはじめての品種に、「栽培方法の正解がわからない」という状況でした。そこで、さいたま市からの委託でトキタ種苗が指導にあたり本格的な栽培がはじまりました。

 

 

  


Q:それほど苦労をしてまでチャレンジするのは、生産者さんにとってメリットはどこにあるのでしょうか?

さいたま市は、1 軒あたりの耕地面積が小さく、大規模農業によってコスト低減を図るということが、困難です。また「京野菜」「鎌倉野菜」のように地域イメージでブランディングする事もむずかしい、従来野菜では良いものを作っても価格に反映されない。そこで自分達が価格を決め、高収益を期待できる品種に挑戦したいという気持ちがあったと思います。さいたま市の農業は市街地や東京に近く、お客様の声や市場ニーズが捉えやすい、種苗会社、卸売会社が地元にあるという強みもあります。

もちろんリスクはありますが、特色あるヨーロッパ野菜にチャレンジする事は、これらの問題に対する解答の一つであると思います。

 

Q:根本的問題解決の一つの答えだということですね。研究会の生産者さんは、従来野菜とヨーロッパ野菜をどのくらいの比率で作られていますか?

研究会への加入期間や、生産者さんの考え方によって異なりますが、ヨーロッパ野菜のみという方もいらっしゃいます。

 

Q:販売ルートについてお伺いします。従来野菜のルートと異なると伺いましたが?

従来のJA → 市場 → 卸 → 小売りを介したルートではなく、生産者が共同出荷し、業務用卸から直接レストランへ供給する方法をとっています。業務用の卸さんも研究会メンバーですので、誰がつくっているのかをちゃんと伝えられることが出来ます。中間マージンの削減というよりそのことを大事にしています。

 

Q:なるほど信用と安心の提供、それにブランド化ですね。生産者が直接販売する方法はとらなかったのですね

生産をしながら、受注管理、料金回収、梱包・発送まで行うのは、大変な負担です。それを苦にやめてしまう生産者が多いと聞きます。メインの販売先が飲食店なのですから、専用の卸会社に入ってもらえる方が有利です。レストラン側も他の食材と一緒にヨーロッパ野菜を発注することができますから効率がよいわけです。

 

 

 


Q:出荷や生産過程で発生する膨大な事務作業を、芝浦工業大学の協力で解決したと聞きましたが?

大宮に大学のキャンパスがある関係で、以前から地元の「ものづくり企業」などと、交流がありました。3年前に大学側から「工業系大学として、農業の支援がしたい」というお話があり、お互いに、どんなニーズがあるのか、何ができるのか、話し合いをしました。その結果、これまで生産者が膨大な手間をかけて手作業で行ってきた、出荷情報や栽培情報の管理を、アプリやソフトウェアを使って安く簡単に解決できることがわかりました。

以来、「工業大学だからできる農業支援」に関わっていただいています。

 

Q:メインの買い手である、レストランについてお聞きします。

市内のレストランは、今どのような状況にあるのでしょうか?

さいたま市にはイタリアン、フレンチのレストランが200軒以上あり、ワイン、チーズ、パスタの一人あたりの消費量が全国トップクラスです。また都内や海外の一流店で修行したシェフも多くいるのでレベルも高いと思います。しかし地元の人でも「記念日」などのお祝いでは、地元レストランを使わず、東京に行ってしまう。名産品、特選素材がないのも理由だと思いますが、レストラン側も悔しい思いをしていました。「どうすればもっと地元レストランを使ってもらえるか」。そこで輸入品や代用野菜にたよらず、地元産の新鮮なヨーロッパ野菜がつかえれば、料理の質も上がり、地産地消として特色を出す事もできると考えたようです。

 

 


Q:レストラン側でもブレイクスルーを狙っていたと。いままでも地産地消をうたっている店をよく見ますが、居酒屋の緑提灯とか?

自分で農地を持っている飲食店は別ですが、地産地消とうたいながらも、実際には使っている地元産品の種類や時期が限られていたり、頻繁に仕入れる事が難しい飲食店が多いようです。

 

Q:さいたま市の飲食店の市場規模はどのくらいでしょうか?

さいたま市内だけでも、飲食の年間売上は、約1,000億あります。原価率を考えると300億くらいが材料費ですから、野菜だけでなく他の食材も含まれますが、かなりの規模だといえるのではないでしょうか?

 

Q:有力な市場というわけですね。その中で研究会がレストランに卸しているヨーロッパ野菜の売上は、どのくらいでしょうか?

昨年が3,000万円、今年は4,500~5,000万円の見込みです。

 

Q:ヨーロッパ野菜を広く知ってもらうために、どのようなPRをされていますか?

レストランや、卸の営業担当者向けにヨーロッパ野菜の勉強会を開催しています。洋食だけでなく、和食や中華の組合でも、調理方法の講習会を行うこともあります。さいたまスーパーアリーナで開かれる、関東食糧主催の食材展示会「NEW FOOD FAIR」には3年連続で出展しています。

一般向けには調味料メーカーのキューピーとのコラボレーション企画レシピコンテストで新しい食べ方の提案なども行っています。

 

 


Q:フェンネルという農事組合法人を設立されましたが。

経営の強化を考えて作りました。任意団体では得られない信用を得て、大手流通と契約する際にも、法人であれば独自に契約することが出来ます。なにより、「我々はこれからもヨーロッパ野菜を作りつづけますという意思表示でもあります。



Q:決意というか、覚悟というか気持ちが伝わってきますね。

最後に今後の事業拡大について教えてください。

メインターゲットは、やはりレストラン業界。市内だけでなく東京での拡大も考えています。また中食といわれる駅やデパートの地下惣菜売場などや、通販サイトへの提供も開始しました。通販の場合は野菜の調理法などの情報を合わせて提案できるので今後有望なターゲットと考えています。一般の消費者、とくに男性にはまだ馴染みの少ない食材ですが、今後アピールを行って身近な食材と感じてもらえるようにしていきたいです。「ブランドの浸透」、「生産面積拡大や人材育成」、流通システムのレベルアップ、物流・加工品の開発、観光業者とのタイアップを行いながら、2020年には売上1億を目しています。

 

Q:本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

 

 

【インタビューを終えて】

いま研究会のつくる野菜は、レストランの圧倒的な支持を得て、フレンチ、イタリアンだけにとどまらず、中華、居酒屋などのメニューにも採用されています。生産者は当初の4名から11名に、出荷高では3年で30倍に伸びているそうです。

野菜がおいしいのはもちろんですが、そのおもしろさと、食材として提供出来るようになるまでのストーリー性が受けているようです。メディアの取材も年間30回以上と聞きますから凄いですね!

生産者、飲食店、種苗会社、物流、行政、大学が、個人の利益に走ることなく、それぞれが信頼関係の上に仕事をして、関係者すべての業績が向上しているそうです。

また、さいたまヨーロッパ野菜研究会のサポートレストランでもあり、ワイン販売等も行っておられるノースコーポレーションでは、レストランシェフが出向き、ヨーロッパ野菜を使った学校給食を提供する「シェフ給食」をCSR活動の一環として続けられています。最近、大型マンションの建設ばかりが目につくさいたま市ですが、さいたまヨーロッパ野菜研究会のような活動が、本当の意味で地域を豊にするのではないかと感じました。

現在、全国30箇所で同様にイタリア野菜の栽培がはじまり、トキタ種苗を通じ産地リレーに向け、全国で連携を開始したそうです。さいたま市はそのトップランナーとなっています。今後も良い見本となるために研究会の方にはリードしてもらいたいですね。

伊勢丹浦和店で、一般用に販売されていますので、お近くの方は是非お試し下さい。福田さんのお話しでは、ヨーロッパ野菜は、苦みがあるものが多く、山菜のように調理すれば、おいしい和食にもなるようです。

私も、今週末は家族サービスを兼ねて市内のレストランを訪ねてみようと思います。

さいたまヨーロッパ野菜研究会  http://saiyoroken.jimdo.com/

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*写真提供、ヨーロッパ野菜研究会